(1) 容量分析用標準物質

容量分析では、酸・アルカリ滴定、酸化還元滴定、キレート滴定用などの滴定用溶液(規定液)が用いられるが、これら滴定用溶液の正確な濃度値の決定(標定)に容量分析用標準物質が用いられる。この物質は、容量分析におけるいわば物差しの役を果たしており、表示されている純度値をもとにして物質量、含有量などの数値がきめられることになる。 JISでは、JIS K 8005容量分析用標準物質として下の表に示す11品目が規定されている。

容量分析用標準物質の種類とその乾燥条件

品目 純度 乾燥条件
亜鉛(Zn) 純度99.90%以上 乾燥条件塩酸(1+3)、水、エタノール(99.5)(JIS K 8101)、ジエチルエーテル(JIS K 8103)で順次洗い、直ちにデシケーターに入れて、約12時間保つ
アミド硫酸(HOSO2NH2 純度99.90%以上 乾燥条件めのう乳鉢で軽く砕いた後、減圧デシケーターに入れ、デシケーター内圧を2.0kPa以下にして約48時間保つ
塩化ナトリウム(NaCl) 純度99.98%以上 乾燥条件600℃で約60分間加熱した後、デシケーターに入れて放冷する
酸化ひ素(III)(As2O3 純度99.98%以上 乾燥条件105℃で約2時間加熱した後、デシケーターに入れて放冷する
しゅう酸ナトリウム(NaOCOCOONa) 純度99.95%以上 乾燥条件200℃で約60分間加熱した後、デシケーターに入れて放冷する
炭酸ナトリウム(Na2CO3 純度99.97%以上 乾燥条件600℃で約60分間加熱した後、デシケーターに入れて放冷する
銅(Cu) 純度99.98%以上 乾燥条件塩酸(1+3)、水、エタノール(99.5)(JIS K8101)、ジエチルエーテル(JIS K8103)で順次洗い、直ちにデシケーターに入れて、約12時間保つ
二クロム酸カリウム(K2Cr2O7 純度99.98%以上 乾燥条件めのう乳鉢で軽く砕いた後、150℃で約60分間加熱した後、デシケーターに入れて放冷する
フタル酸水素カリウム〔C6H4(COOK)(COOH)〕 純度99.95~100.05% 乾燥条件めのう乳鉢で軽く砕いた後、120℃で約60分間加熱した後、デシケーターに入れて放冷する
ふっ化ナトリウム(NaF) 純度99.90%以上 乾燥条件500℃で約60分間加熱した後、デシケーターに入れて放冷する
よう素酸カリウム(KIO3 純度99.95%以上 乾燥条件めのう乳鉢で軽く砕いた後、130℃で約120分間加熱した後、デシケーターに入れて放冷する

注:

1.乾燥時に用いるデシケーターの乾燥剤は、JIS Z 0701に規定するシリカゲルA形1種を用いる。

2.容量分析用標準物質は、常に乾燥剤を入れないデシケーター中に保存する。

これらの容量分析用標準物質は、独立行政法人製品評価技術基盤機構が一元的にJISによる品質試験を行い、その純度値の値付けを行っている。この純度値(特性値)を表示したものが試薬製造業者等から販売されている。

なお、表中の純度はJISに規定された規格値であるが、市販品には独立行政法人製品評価技術基盤機構が値付けした値が小数点以下2けたまで表示されている。

「乾燥条件」は、使用者が使用時に行う必要がある乾燥の条件を示している。この条件を順守して、初めて前述の正しい純度値が得られる。

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