試薬会誌

新年号 2025.1 No.75賀詞交歓会

 2025年1月8日(水)、午前11時から12時半まで、東京・日本橋の日本橋三井ホール(コレド室町1)において、一般社団法人日本試薬協会の新年賀詞交歓会が開催された。晴天でピリッとした空気の中、約280人が参集し、交流と情報交換に花を咲かせた。

野澤会長の挨拶
野澤会長の挨拶


 開会の挨拶に立った野澤学会長(関東化学株式会社代表取締役社長)は冒頭で、「年末年始は冬の観光地に行ってみたいと思い、初めて白川郷を訪れた。雪もほどほどで楽しむことができたが、かなりの混雑だった。インバウンドの方々が多く、95%は東南アジア系だったと思う。日本の観光地の人気がすごいことをあらためて実感した。好調なインバウンドだけでなく、政府の総合経済対策により、今年は国内消費の盛り上がりも期待したい」と話した後、本題に入った。

 「科学技術については、AI(人工知能)や先端半導体への長期的な大規模投資、バイオやヘルスケア関連の製造・研究開発拠点の整備が進められている。とくに、バイオテクノロジー関連技術を活用した創薬、再生医療、遺伝子治療、ワクチン開発など、産業界が注目すべき方向性は明らかだ。われわれ試薬業界は、新しい試薬の開発などを通し、未来産業の研究開発や技術革新に貢献していくことが大事な役割である。今後の試薬業界の皆さまの活躍を期待している」と述べた。

 続いて、日本試薬協会のトピックスを三つ取り上げた。まずは法規制関連の動きで、労働安全衛生法の改正により、今年4月1日からSDS表示が義務づけられる化学物質が大幅に増加しており、メーカー各社でSDSの追加作成が行われている。野澤会長は「協会のウェブサイトでは試薬メーカーのSDSを検索できるよう、各社へのリンクを進めている。ぜひご活用いただきたい。また、ウェブサイトに掲載されている『学ぼう!試薬』の第6弾として消防法の動画を制作中。さらに、PFAS規制動向、物流2024年問題への対応を含め、試薬業界に関わる法律は多い」と紹介。「これからも、法令順守と環境保全に取り組み、多くの社会責任を果たしつつ、科学技術の発展に貢献する先端企業群であり続けたいと思っている」とした。

 二つ目と三つ目のトピックスはイベント関連の話題で、3月4日に開催する『試薬の日記念講演会』について、「富士フイルムの開発者にAIを駆使した内視鏡検査の話をしていただく。昨年のノーベル化学賞、ノーベル物理学賞ともAI関連の研究が受賞した。今回は医学に関係したAI活用の成功事例を取り上げることになるので、すばらしい講演になると期待している」。さらに、「今年は東西の試薬協会が合併して当協会が発足して25周年を迎える記念の年だ。ついては、昨年11月の理事会で『日本試薬協会設立25周年式典』を行うことを決めた。特別ゲストによる記念講演会も企画しているので、こちらも楽しみにしてほしい」と話した。

 最後は干支に関する話題で、「巳年の蛇は神様の使いで、龍神として祀られることも多い。また「巳(み)」から「お金が身につく」とも考えて、商売繁盛の神様とすることもあるようだ。皆さまにとって、今年が商売繁盛の幸多い年になることを祈念したい」と締めくくった。


 続いて、来賓を代表して、経済産業省商務情報政策局商務・サービスグループ生物化学産業課生物多様性・生物兵器対策室の小林正寿室長が登壇。「昨年は33年ぶりの大幅な賃上げがあり、企業の設備投資も史上最高水準で、日本経済には明るさが出てきている。こうした流れを確かなものにするべく、今年も精一杯対応していきたい。皆さまの試薬業界は、医療、バイオテクノロジー、環境科学などさまざまな産業の基盤となる重要なお仕事をされており、とくに最近の科学技術の発展、例えばバイオ創薬、再生医療、分析の自動化、AIの導入といった動きの中で、試薬の需要はますます高まっていくと認識している」と述べた後、昨年コロンビアで開催された生物多様性条約第16回締約国会議の話題に触れた。

 「この条約の下で、遺伝資源のデジタル配列情報を利用して得られた利益を国際的に配分する枠組みをつくるという議論が行われた。こうした利益配分は皆さまのお仕事にも関係する可能性があるので、こちらの事務局の方にも状況をご説明した。変化の激しい世の中だが、さまざまな動きをしっかり把握し、皆さま方とコミュニケーションを取って、皆さまのお仕事が安定して、発展していくように取り組んでいきたい」と発言した。

 最後に、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、4月から開催される「大阪・関西万博」を取り上げ、「国内外の多くの方々と共に、未来社会をどうつくっていくべきかを考える場としたい。関係各方面と成功に向けて全力で取り組んでいるので、ぜひお力添えをいただきたい」と述べ、挨拶を終えた。

経済産業省 小林室長の挨拶
経済産業省 小林室長の挨拶


 その後、浅川直幸副会長(東京化成工業株式会社代表取締役社長)が乾杯の発声に立った。「日本試薬協会はたいへん重要な責務を担っており、それには会員企業の皆さまの協力が非常に重要。日本の科学技術を発展させるため一致団結していろいろな問題に取り組んできたい」と表明。そして、「わたし個人は横浜ベイスターズの大ファンでして、他球団のファンの方には申し訳ないが、昨年は個人的に良い年だった。今年もいろいろなことがあるかもしれないが、がんばっていきましょう」と述べ、乾杯の音頭を取った。

浅川副会長の乾杯の挨拶
浅川副会長の乾杯の挨拶


 なごやかな歓談が続き、刻限の12時半が近づいたころ、吉田光一副会長(富士フイルム和光純薬株式会社代表取締役社長)が閉会挨拶のために登壇。まずは冒頭で昨年を振り返り、「欧州と中東を中心に地政学的リスクが高まり、中国経済が減速し、多くの国で政権交代が行われ、国際情勢の不透明感が増すなか、今後も社会・経済環境について先の見通せない不安定・不確実な状況が続くと考えられる」と指摘。

 「それを踏まえて二つの話をしたい。まず、不安定・不確実な状況であるからこそ、本日このような場でなされたように企業リーダーが交流し情報交換することが重要であるということ。社会・経済情勢は必ず動く。これまで通りでないことが常に起きると考えなければならない。何が起きても、信頼関係のもとに共に解決を図ることが重要だと思う。そのため、普段から協力関係を構築しておくことが大事で、常日頃から交流・情報交換を進めていただきたい」。

 「もう一つは、不安定・不確実な社会・経済状況のなかで、バイオ技術・バイオ産業の発展については、安定であり確実なのものだということ。バイオ技術は飛躍的な発展を遂げ、さまざまな分野での応用が期待されている。また、今年4月には大阪・関西万博が開催されるが、未来技術が展示され、バイオ技術の発展・応用がさらに加速することもあり得る。いずれにしても、研究開発、バイオ産業を支援するわれわれの責務がより一層重要になってきていると感じる。皆さまと一丸となって、研究開発、バイオ産業を支え、盛り上げ、社会に貢献し、お客さまとともにわれわれも発展していきたい。2025年も一丸となって頑張っていきましょう」と力強く発言。一丁締めで景気よく中締めし、散会となった。

以上

吉田副会長の閉会の挨拶
吉田副会長の閉会の挨拶


歓談風景
歓談風景

ホーム

戻る