日本試薬協会誌No.77秋季号発刊にあたって
日本試薬協会の会員の皆さま、そして関係各位におかれましては、平素より当協会の活動に多大なるご支援とご協力を賜り、心より厚く御礼申しあげます。実りの秋を迎え、皆さまにおかれましても、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。さて、ここに日本試薬協会誌No.77秋季号をお届けいたします。
目まぐるしく変化する社会情勢と試薬業界の役割
現在、我が国の経済は、米中間の貿易摩擦や緊迫した国際情勢の影響を受け続けております。原材料価格の高止まりや物流の「2024年問題」に伴うコスト負担の増加など、試薬業界を取り巻く環境は依然として厳しい状況が続いています。このような状況下で、私たちが担うべき社会的責任はますます大きくなっています。特に、労働安全衛生法の改正をはじめとする化学物質管理に関する規制強化への対応は喫緊の課題です。当協会では、これらの法改正に関する情報を会員の皆さまへ迅速に周知徹底するとともに、ホームページのSDS検索システムを継続的に更新し、広く社会に情報を提供することで、関連法令の適切な運用に努めております。
一方で、デジタルデバイスや生成AIといった最先端分野の研究開発が急速に進展し、私たちの試薬がその発展に大きく貢献しています。また、医薬品業界では、低分子医薬や抗体医薬に続く新たな創薬技術(モダリティ)として、核酸医薬やペプチド医薬品などの中分子医薬品が注目を集めており、その市場拡大が期待されています。こうした新しい科学技術の潮流を支える基盤として、高品質・高機能な試薬に対する期待はますます高まっています。
日本試薬協会の活動と今後の展望
当協会は、こうした期待に応えるべく、2025年度も多岐にわたる活動を展開してまいりました。規格委員会では、日本規格協会との共同事業としてJIS規格の改正原案を作成したほか、日本薬局方や食品添加物公定書の原案作成においても専門家としての助言・提案を行いました。安全性・環境対策委員会では、厚生労働省や東京都からの調査依頼に協力し、社会の安全確保に貢献しました。
さらに、試薬に関する知識の普及・啓発にも力を注いでいます。3月9日の「試薬の日」には記念講演会を開催し、「日本薬学会」をはじめとする学会・展示会への出展や後援を通じて、広く一般の方々との交流を図りました。また、協会イメージキャラクターを活用した動画「学ぼう!試薬vol.5~毒物及び劇物取締法~」を制作・公開するなど、新しい形での情報発信にも取り組んでいます。これらの活動は、次年度の事業計画においても継続・強化してまいります。
先行き不透明な時代ではありますが、このような時こそ、私たち試薬業界が実直なモノづくりとサービスを通じて顧客の信頼を得て、科学技術の振興と国民生活の向上に貢献していくことが重要です。当協会は、今後も経済産業省をはじめとする関係省庁のご指導をいただきながら、会員企業の皆さまにとって有益な情報収集と学びの機会を提供してまいります。
結びに、会員各社ならびに関係各位のますますのご発展を心よりお祈り申しあげますとともに、引き続き当協会の活動にご理解とご協力を賜りますようお願い申しあげ、ご挨拶とさせていただきます。