試薬について

試薬とは

生産形態

試薬の生産形態は、その用途の性格上少量多品種型であり、これが大きな特徴となっている。試験、研究、物性測定などに必要とされる試薬の種類は、当然のことながら通常の化学工業プロセスで用いられる薬品よりもはるかに多品種とならざるを得ないし、また用途に応じて同一の物質であっても各種の品質のものが要求されることとなる。このため、各試薬業者の取り扱う試薬の品種は数万種にのぼり、商品の種類としては十数万種にのぼるといわれている。しかし、日常的に流通しているのはたかだか数千種である。 一方、試験研究などにおける1回の使用量が限定されているため、生産単位(ロット)の大きさは、一般の工業薬品に比較してはるかに小さなものとなっている。試薬としては、取扱い量の大きい塩酸などでも1ロットは多くて2,000kg程度であり、少量のものでは1ロットがミリグラム単位であって、しかも数年に一度しかつくらないというものもある。このような少量多品種型の生産に対応して、試薬の製造プロセスは一般化学工業のような連続生産工程はとらず、通常は小型のバッチ式によっている。 また、品種が多いため品種ごとの専用生産設備をもつということは、極めてわずかの例外を除いてはおよそ不可能に近く、共用設備を用いて多数の品種を生産することが多い。

品質

試薬の第2の特徴として、高度な品質管理がなされていることがあげられる。
ここで注意する必要があるのは、「試薬の品質」という概念である。単に高純度であるというだけでは、品質の高い試薬とはいえない点が一般の工業薬品とは異なる点である。たとえ相当純度の高い薬品であっても、ごく微量の不純物のため目的の試験研究や検査、測定などが妨害されるのであれば、試薬としての役目は果たせないのである。このため試薬の品質管理は、含有される不純物に対してまでも向けられている。

試薬には高い品質が要求されることに加え、一定の品質を保持することが要求される。すなわち、試薬の製造にあたってはいつ生産された製品でも品質が均一であることが要求される。このような品質管理は、連続大量生産方式による工業薬品の場合よりも試薬のような少量のバッチ方式の生産のほうが化学反応条件の調節などに以外に難しい点がある。このため、原料、副原料の品質の均一性の確保などの原材料管理や仕込み、反応、結晶化、蒸留、精製、小分けなどの各段階において精密な工程管理がなされている。

表示

試薬の第3の特徴は、その品質の内容が明示されていることである。
一般的に試薬の使用者が使用目的に適合した試薬を選択するためには、試薬の純度と不純物の量などについて知ることができなければならない。このような使用者の要求を満足させるため、試薬の種類により必要な試験の項目と、その規格値を記載した品質表示(品質表)が試薬にはなされている。
また、試薬には、通常、その容器または取り扱い説明書などに品質表示(品質表)のほか法に基づく表示、等級、ロット番号あるいは製造年月日(またはその略号)などが記載されている。

容器

試薬の包装単位は、一般的には500g(もしくは500mL)または25g(もしくは25mL)のものがほとんどであり、このほかに、100mg,1g,50g,100g,15kg,25kg,1L,3L,18Lなどの各種類がある。このように包装単位が小さいことが試薬の特徴の一つである。

試薬の包装・容器は、貯蔵中に試薬の品質が変化しないように配慮されている。容器の材質には、通常はガラス、合成樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、金属などが用いられており、試薬の性状に応じて適切なものが選択されている。また、日常の取り扱い中または普通の状態で保存する間に液体または固体の異物あるいは水分が侵入することを防ぎ、内容物が風解、潮解または蒸発しないように、通常は気密性の容器が用いられる。

特に気体の侵入を防止する必要のある場合には、アンプルなどの密封容器が用いられる。さらに、光の影響を防ぐ必要のあるような試薬に対しては、褐色瓶などの遮光された容器が用いられている。

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